はじめに
「大型フィギュアを作りたい。でも検討する項目が多すぎて、どう進めるべきなのか分からないから、トータルでお任せできるところはないか」そういったご要望は多いです。
オウル・クラフトでは、3Dプリントに限らず、切削、FRP、各種成形など、製作するものの条件に合わせた工法を検討し、表面処理・塗装・組立まで含めて、大型立体物を完成形までプロデュースしています。
今回、大手造形サービスビューロ様を通じて、株式会社ポケットペア様の『Palworld/パルワールド』に登場するキャラクターの大型フィギュアを製作しました。
東京ゲームショウ2026での展示に向け、3Dデータの確認・編集から大型造形、仕上げ・塗装、加飾、組立、梱包・搬入まで、複数の工程を組み合わせて製作しています。
本記事では、実際の製作事例を通して、大型キャラクター立体物がどのような工程で形になっていくのかをご紹介します。

仕様未決定、CADCG3Dデータ未完成、でも問題ありません
プロジェクトが大きくなればなるほど、クライアント、ライセンサー、造形会社、設計、仕上げ、塗装、加飾、梱包、輸送、展示会関係者など、複数の関係者が関わることになります。
それぞれの工程を個別に手配することもできますが、発注が増えるほど、仕様の伝達やスケジュール調整、品質確認などの負担も増えていきます。さらに仕様が決まっていなかったり、3Dデータが無い、或いは未完成であったり、色が決まっていないということも多いです。
とはいえ、初期段階で製法や仕様が決まっていなくても問題ありません。今回の製作では、ゲームで使用されているキャラクターの3Dデータをご支給いただき、そこからCGとCADと用いてフィギュア製作に適した形に立体化していきました。
設計について

一般的に、ゲームや映像作品のキャラクターを展示会やイベントで使用する大型立体物として実現する場合、ゲーム内の3Dデータをそのまま大きくして3Dプリントすれば完成する、というわけではありません。
大型化した際の形状や強度、パーツの分割・接着・組立方法、装飾品の取り付け、色や質感の再現など、実物として成立させるためにはさまざまな検討が必要になります。
また、フィギュアに付属する装飾品や土台などについても、
「取り外せるようにするのか」
「本体に固定するのか」
「輸送時には分離するのか」
というように、必要となる構造や製作方法が変わります。
複数回のライセンサーチェック
さらに、キャラクター案件では、ライセンサーチェック(製作途中での形状確認)など、関係者と確認を取りながら進めるケースもあります。
「大きさを調整したい」「腕の角度を変えたい」「不自然な箇所を直したい」
そういったご要望に応じてゲームのイメージ通りとなるよう、3Dデータを煮詰めていきました。ここでいかにクライアント様のご希望通りな仕様まで持っていけるかが全体の工数を大きく左右するため、綿密に打ち合わせを重ねる必要があります。今回も3Dデータ編集の進行に合わせて、ライセンサーに何度かチェックしていただきつつ、何度も修正を重ねていきました。

大型3Dプリンターで各パーツを造形
調整した3Dデータをもとに、各パーツを大型3Dプリンターで造形します。今回は弊社造形機も使いつつ、大手サービスビューロ様で多数造形のご協力をいただきました。

一体で造形できないサイズの場合は、形状や組立方法に合わせてパーツを分割します。造形が完了したら、各パーツの状態を確認し、次の工程へ進みます。
仮組を行う

各パーツが揃ったら、一度仮組を行い、パーツ嵌合(はめ合い)や強度などを確認します。塗装後は塗膜が乗り、各パーツがハマらなくなることもあるので、最終工程まで予想しながらクリアランスや可動部などをチェックすることが重要です。もしここで不具合などあればデータ修正し、作り直して再調整を行います。
パーツを接合し、一体のフィギュアへ
造形したパーツを組み合わせ、接合部を処理していきます。大型フィギュアでは、パーツ同士のわずかなズレや段差も完成後には目立つため、全体の形状を確認しながら調整します。

表面処理で下地を仕上げる
造形後のパーツには、積層による凹凸や接合跡などが残ります。そこでさまざまな番手のサンドペーパーを使ったハンドフィニッシュによる表面処理で、塗装に適した状態まで仕上げます。
手や機械を使い分けながら、表面品質を上げていきます。大型フィギュアは表面積が大きいため、細かな凹凸や傷も目立ちやすく、仕上げは完成時の品質を左右する重要な工程です。


この工程を何度か繰り返し、さらにサフェで整えていきます。

サフェ仕上げ3D形状ライセンサーチェック
白サーフェイサーが吹かれた状態では、全身が白くマットになり、各フィギュアの形状を確認するには良いタイミングとなります。
もし各キャラの形状やポーズなどがクライアント様の意図と違っていた場合、後からの変更が非常に困難となるため、実際にご来社いただき目で見ていただいた上で、その場でミーティングを行い詳細を詰めていきました。
次はいよいよ塗装・調色工程に入ります。
色やツヤ、特殊表現が決まっていない部分も、相談を重ねながら進行

色や印刷含めた加飾は重要な項目です。そしてライセンサー、我々とも、双方の意思疎通ができていないとなかなか進まないセクションでもあります。例えば以下のようなケースではどうでしょうか。
ゲーム画面の色しかない場合どうする?
RGBやCMYK指定で実物を再現できる?
Pantoneやマンセル値で指定できる?
指定のツヤ感は再現できる?
実物サンプルに合わせられる?
グラデーションは再現できる?
高輝度色、メッキ、ウェザリングやシェーディングといった特殊表現は可能?
こうした割と判断しやすい項目から、後述しますが判断が難しい抽象的な項目もあります。結論、全て再現可能といえるのですが、クライアント様の希望する内容を理解しながら、ゲームの世界観をフィギュアに落とし込み、唯一無二の再現性・クオリティーで製作していきます。
調色確認を行う

ゲーム内のキャラクターカラーを実物の立体物として再現するため、指定色を確認しながら調色を行いました。さらに、色だけでなく、光沢感や全体の質感も確認しながら塗装を進めます。
指定された色が出来上がったら、それを実際にライセンサーにチェックしていただきます。そこで色の差異などがないか確認していただくことが、フィギュアの出来栄えを決めます。
色やツヤ確認は、同じパントーンでも違う部屋の違う蛍光灯で見たら違った色に見えるわけですから、パソコンの液晶画面などでは正確に判断できないため、同じ光源のもと、人間の目で確認することが一番です。我々もクライアント様に合わせて光源を変えたり太陽光で判断したりと工夫しております。
今回も実際にライセンサーにご来社いただき、弊社環境下で色を決めていただきました。そうしたことが難しい場合でも、現物をご支給いただくことで、その色に調色することは可能です。
このように長期にわたるプロジェクトでは、確認事項や調整事項が多岐にわたるため、適宜チャットなどのコミュニケーションツールも活用しながら進めていきます。今回ポケットペア様、造形サービスビューロ様に迅速かつ丁寧にご対応いただき、各工程での確認や調整をスムーズに進めることができました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。

キャラクターの色を実物の塗装で再現する
キャラクターの大型立体物では、画面上で見ている色をそのまま塗料の色として指定することは難しいため、Pantone(パントーン)などの色チップや実物サンプルなどを基準に調色し、実際の塗装状態を確認しながら色を合わせていきます。
また、単純な色合わせだけではなく、
・光沢感
・彩度
・濃度
・明るさ
・グラデーション
・特殊な表現
など、キャラクターごとの特徴も確認します。
大型化したキャラクターでは、わずかな色や光沢の違いでも全体の印象が変わるため、形状と同様に仕上がりを確認しながら調整していきます。また、「このキャラだけツヤを少し変えたい」「この部位はゲーム中の揺らぎを再現したい」など、細部に渡って要望を聞きながら再現していきます。


判断が難しい抽象的な項目について
キャラクターの立体化では、仕様書や3Dデータだけでは表現しきれない要望が出てくることもあります。
「もう少し温かみを出したい」
「生きているような感じにしたい」
「リアル感を加えたい」
「かわいくしたい」
「戦っている感を出したい」
「キャラクターらしさを残したい」
「初期キャラの未完成感を出したい」
「ゲームの雰囲気を実物で再現したい」
といった、数値だけでは表現しにくい要望です。特にキャラクターの立体化では、ライセンサーが大切にされている形状や色、質感、キャラクターらしさを理解し、それを実際の立体物として成立させるための技術的な判断が必要になります。図面やデータに記載された仕様だけでなく、最終的にどのような印象の立体物にしたいのかを共有することも重要になります。こうした場合も丁寧にヒアリングを重ね、現場スタッフとイメージを共有しながら、光沢や色、塗装表現、仕上げ方法などに反映していきます。
このようなスタイルからは、現場スタッフ達からも「ここはもっとなじませた方がよい」「このままでは不自然だから丸めた方がよい」「ゲームイメージからするとこうなのでは?」といった積極的な提案が生まれ、プロダクトに反映されクオリティーの向上に繋がっていきます。






このように、「分かっている人が見ても納得」のクオリティーまで仕上げていきます。
目や細かなグラフィックをUV印刷で再現
大型フィギュアでは、目や模様、ロゴなどの細かな表現をどのように再現するかも重要です。こうした部分は、すべてを塗装だけで仕上げるのではなく、UV印刷などの加飾方法を組み合わせることで、元のデザインをより正確に再現できる場合があります。
画像データやIllustratorデータなどをもとに印刷用データを作成し、必要に応じて色調整を行います。立体造形と加飾を別々の工程として考えるのではなく、最終的なキャラクターの見え方を基準に、造形・塗装・印刷の方法を組み合わせていくことがポイントです。
各キャラとも何度かの試作を経て、とても魅力的な仕上がりとなりました。


組立・最終調整
各パーツの塗装が完了したら、最終的な組立を行います。全体のバランスや接合部、塗装状態などを確認し、必要な調整を行います。こうして、ゲーム内の3Dデータが展示用の大型フィギュアとして完成しました。




最終チェック
ここまでくれば、あとは最終チェックとなります。ふたたびライセンサーにご来社いただき、細部や全体のバランスも含めて確認していただきました。今までの全工程の集大成をお披露目するわけですから、我々も最も緊張するとともに楽しみな瞬間となります。
今回はライセンサーより「ほぼ完ぺきです」という言葉をいただき、非常に満足していただけました。最終チェックを済ませたフィギュアたちは、このまま展示会場に運ばれることになります。
展示や移動を考えた強度と構造

完成した大型フィギュアは、完成した後の取り扱いも重要です。通常、工場のから展示会場までトラックなどで運ばれますが、搬入用木箱を製作することが多いです。その場合、
製作
↓
梱包
↓
輸送
↓
搬入
↓
会場での組立
↓
展示
という工程があります。
そのため、製作段階から輸送や搬入のことも考えておく必要があります。特に大型フィギュアでは、輸送中の振動や積み下ろし、会場での移動などによって、完成品に負荷がかかる可能性があります。擦れや破損などを防ぐため、各フィギュア専用の木箱を設計し、付属品などをベルトで固定しつつ省スペース設計となるよう注意して製作していきます。

また、国内用、海外用でも違いがあるため、外観だけでなく、「どう運び、どう展示するか」まで考えて製作方法を決めることが重要です。
今回の製作では、展示会場まで安全に運ぶための梱包・輸送についても準備を行い、東京ゲームショウ2026の会場へ搬入しました。大型の展示物では、製作だけでなく、その後の輸送・搬入まで含めて計画しておくことで、展示会当日のトラブルを抑えることにつながります。
まとめ

本案件に携わっていただいた関係者の皆様、このような貴重な機会、ご縁をいただき、誠にありがとうございました。
今回パルワールド大型フィギュア製作では、支給された3Dデータをもとに、立体化に必要なデータ編集から大型造形、強度や分割・組立方法の検討、色合わせ、塗装・加飾、梱包、東京ゲームショウへの搬入まで、さまざまな工程を組み合わせて製作させていただきました。
弊社では、そうした専門的な部分を含め、製作のスタートからゴールまでを一気通貫でお任せいただける体制を整えています。
「大型フィギュアを作りたいが、何から決めればよいか分からない」
「キャラクターのイメージを崩さず、確かな品質で立体化したい」
「造形だけでなく、塗装・加飾・組立・搬入までまとめて任せたい」
そのような場合も、まずは実現したいイメージをお聞かせください。お預かりしたキャラクターの価値を大切にしながら、必要な工程をこちらで組み立て、完成形まで責任を持って製作します。
大型フィギュア製作のお見積りをご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。









